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僕は国粋主義者でもないし歴史が格別好きというわけでもないんですけど、本屋で「明治天皇」というシリーズが文庫で出ていて全部買って一気に読んでしまいました。

日本人より日本をよく知っていると言われるドナルド・キーンの書いたものを久々に見つけたんで読んでみようという気になったのもありますけど、一番の理由は高校の頃読んだ漱石の「こころ」にあります。

「こころ」って多分どこの高校でも授業で扱うと思うんですけど、主人公である「先生」は何故自殺したかっていうような問題がテストで出ませんでした?
明治天皇崩御のあと乃木大将の殉死を受けて(だったと思いますが)先生が自殺し、ここで明治時代の知識階層の精神構造みたいな話題があり、そういう文脈で答えされるような問題だったと思いますが。
国語は好きだったんで大抵テストで出るような記述の問題はさらさら答えてた記憶があるんですが、先生の自殺を「明治の精神」に対する殉死と説明する現国の先生にどうも納得が行かず、テストの時もそこだけ白紙回答した覚えがあって、授業後職員室に行って先生と議論してたりもしてまして(あの頃は熱かった!)、自分の中のどこかに「明治の精神って何よ?」という思いがずっとあったんだと思います。

ということで読み始めた「明治天皇」。
面白いです。ただでさえ登場人物が多いのに難解かつ似たような名前ばっかりだったりしてそこを気にし出すと挫折すると思いますが、その辺はそこそこ読み流したとしても上質のドキュメンタリーになってます。文庫で4冊というかなりの長編ですが、注釈や現代語訳の分量がすごいんでそんなに長いという感じはなかったです。
江戸時代後期の和宮下向の頃から乃木将軍が殉死する辺りまで、日本の近代化の道のりを再確認したい人にはとてもオススメです。
歴史の教科書でも明治天皇がどういう人物でといった話題にはほとんど触れていないと思いますが、客観的に見て近代の君主としての評価は世界の中でもかなり高かったことが分かります。そういう意味では君主を神のように崇めさせている意味で参考にできる(というか思い浮かべやすい)北朝鮮の金正日とは全く異なっていたようです。
逆に明治政府の中枢でのどたばた(今の政局なんか目じゃない位いい加減です。都合が悪くなるとすぐ体調を理由に総理大臣が辞職し、議会解散となっていたり、選挙では賄賂が横行したり、もうひどいですね)する議会とかを見る限り、少なくとも国家の最上部では明治天皇が「現人神」であったような印象は全く受けないですね。
乃木大将の殉死についても、新しい大正天皇を補佐、教育する義務を怠ったとして随分批判も受けていたようです。
もっともそれより周辺の階層に属する知識人にとっては確かに神に限りなく近い存在として受け止められていたようですし、いかに当時の日本が西欧列強に追いつこうと無理をしていたかという流れはよく分かります。

とまあこういう流れをふまえてもう一度「こころ」を読んでみようかと思っているわけです。はい。