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忙しいのと分厚くて電車に持ち込めないためにまだ半分も読めていませんが、相当に面白い本です。
いわゆるマイルス本は自叙伝やマイルスを聞け が有名ですが、この「M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究」は、東大での講義記録を基に整理された内容なんで、かなりマニアックかつ学術的な匂いです。
モダンジャズのコード理論の中でいう「モード」とファッション史等でよく扱われる意味の「モード」を引っかけつつ、戦後のポピュラー音楽史と資本主義論も兼ねているような視点がたまらないです。

さらにマイルスの女性遍歴とファッションを含む「センス」全般の変遷についても随時触れられており(要するにそのときどきの彼女に影響されて聞く音楽や格好があからさまに変わっていく)、そういった下世話のようでいてそうでない何というか、とにかく刺激になる要素満載ですね。
特に60年代(作品でいうと「Kind of Blue」の後〜「Bitches Brew」辺りに至る頃)の、マーケットの捉えかたも含めてMilesがジャズのフィールドに決別し、ボサノバ、ビートルズ、スライ、ジミヘンといった「世間でメジャーな音楽」と同じ土俵を目指していく流れは、それらの音楽全部に触れてきた自分にとっては「なるほど」とうなずける部分が多々あり、夜中に独りで興奮してしまう内容だったりします。

加えて、リディアンクロマチックコンセプトの観点から当時の演奏を解析する、といった音楽の技法的な部分にもかなり触れており、いわゆる「モードジャズ」から1コードファンクに至る、II-V進行の呪縛に対するマイルスの実験過程も垣間見ることができます。
※念のため言っておきますが、リディアンクロマチックコンセプトを自分が理解しているわけでは決してありません。はい。
こういう話が説得力を持っているのも、ここ数年の「Completeシリーズ」、つまりリハテイクも含めて編集前の音源がどんどん公開されているからこそ断定できる内容だったりするんでしょうね。昔読んだ同種の本では「どうやら」とか「恐らく」とか、そんな話ばかりでしたから。

70年代以降についてはまだ自分もこれから読む感じですが、近年台頭しているサンプリングとループで構成される音楽の先駆けと言われて久しい「Get up with it」(この中の「Rated X」とかきっと今クラブでかかっても通用するでしょう)や「On the Corner」に関する記述はかなりディープのようで楽しみです(ちなみに前に菊池氏がどこか別の記事で書いていた「On the Corner」の解析もこの上なくマニアックでした)。
菊地 成孔好きやMiles好きにはもちろんオススメですが、現代思想のキーワードで音楽を語る学術書が好きな皆さんにも刺激の源としては最適です。
あるいはMiles Davisといえば「Kind of Blue」より前の作品しか知らない(or聞かない)人がそれ以降のMilesを聞いてみるきっかけにもいいと思います。
「Miles命リスナーの代表」とでも呼ぶべき中山康樹氏の「マイルスを聞け」とは対極にあるような本ですが、どちらも面白いですよ。

ちなみにこの記事を書こうとしたのは、久々にワイト島のロックフェスにMilesが出演した際のDVDを見たからなんですが、ついでにCDも久しぶりに聞こうと思ったら、見つからないもの多数。。。
・Seven Steps to Heaven→改めて購入
・Bitches Brew→MDしか持っていなったんで購入
・Fore & More
・In Berlin
・Nefertiti
・1969 Miles
きっと貸したままなんでしょうけど、誰に貸したのかすらもう覚えてません。
でも買い直してみた「Seven Steps to Heaven」も「Bitches Brew」も明らかに音がよくなってます。
MilesのCDは何度も何度も何度も(と強調したくなるくらい)再発が行われ、その度に「Remastered」と書かれているのですが、最近のマスタリング技術の進化にはホントに驚かされます(何度も同じアルバムを買わせようというレコード会社の魂胆というか功罪というか、まあ乗せられているわけですが)。
きっとLPで発売されたときの音像とは別のものになってるんでしょうけど、「今の音」として聞けるのもそのせいでしょうね。


学生の頃よくはまっていた、知恵熱出そうなこの感じ、味わい方は是非どうぞ!!